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果物は生で

2017年5月11日 毎日新聞夕刊記事「Dr.白澤『100歳への道』より」

糖尿病と果物

糖尿病をいったん発症すると認知症のリスクは2倍、寿命は10年短縮するといわれている。日本を含む東アジア諸国では糖尿病の増加が問題化しているが、伝統的なアジア食に比べ、欧米から輸入された食文化であるファストフードや炭酸清涼飲料水は精製糖質の割合が高く、糖尿病の発症リスクを高めているとされる。一方、果物の摂取に関しては、果物に含まれる天然糖質が糖尿病によくないとする研究結果や、果物の食物繊維が糖尿病の発症を予防するとの研究結果があり結論が出ていない。

生で食べると予防効果も

そんな中、英オックスフォード大のファイドン・デュ博士らの研究チームは、果物を生で摂取すれば糖尿病の発症を予防する効果があることを明らかにした。 チームは中国のバイオバンク調査に参加した48万2591人の中国人を対象に約7年間の追跡調査をし、生の果物の摂取量と糖尿病の発症リスク、糖尿病の合併症のリスクと死亡率との関連性を調査した。その結果、生の果物をたくさん摂取する群は、摂取量が最も少ない群にくらべ、糖尿病の発症率が12%、総死亡率が17%低かった。すでに糖尿病を発症している3万300人を対象に解析すると、果物をたくさん摂取している群は最も少ない群に比べ、総死亡率が41%低下、糖尿病性網膜症の合併率が31%低下、抹消神経症が24%低下、虚血性心疾患が8%低下、脳卒中の合併率が16%低下することが分かった。
 こうした効果のメカニズムは不明だが、血糖の上がりやすいバナナ、ブドウや南国フルーツなどの摂取より、食物繊維が多く血糖が上がりにくいリンゴ、ナシやオレンジなどの摂取が中国では多い点をデュ博士は指摘する。
 糖尿病の発症を防ぎ認知機能を維持するためにも、血糖の上がりにくい果物を生で積極的に摂取するのが良さそうだ。
                   
   (白澤卓二・お茶の水健康長寿クリニック院長)
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コレステロールと認知症

Dr.白澤『100歳への道』より~2017年2月9日毎日新聞夕刊記事

コレステロールと認知症の関連性を見直す必要

日本人の食事摂取基準からコレステロールの摂取基準が撤廃されたのは2015年である。
それまでは1日の摂取上限を成人男性で750mg、成人女性で600mgとしてきたが、摂取量と冠状動脈疾患による死亡率の間に関連性を認める証拠が実証せれなかったためだ。逆に最近の研究で、コレステロールが豊富な卵の摂取に脳卒中予防効果があると報告されたことは本コラムでも紹介した。
 高コレステロール血症は心臓血管疾患のリスクだけでなく、記憶障害のリスクの増加にも関連していると長い間考えられてきた。しかし、東フィンランド大のユキ・ビルタネン博士らの研究チームは、食事に含まれるコレステロールや卵の摂取が、認知症の発症リスクを増やさないのみならず、逆に認知機能を改善する効果があることを明らかにして話題を呼んでいる。

 チームは、認知機能に障害のない42~60歳の健常なフィンランド人男性2497人を22年間追跡調査し、食事に含まれるコレステロールや卵の摂取量が、認知症の発症リスクにどう関わるかを検討。 いずれも、認知症またはアルツハイマー病の発症に関連しないことが分かった。
 興味深いことに、対象者の32.5%がアルツハイマー病の発症リスクが遺伝的に高いAPOE4遺伝子の持ち主だったが、このハイリスク群でもコレステロールの摂取量と認知症の発症リスクの間に関連性を見いだせなかった。

 APOE4の持ち主では食事からのコレステロールが血清コレステロールに及ぼす影響が大きく、心臓病やアルツハイマー病の発症につながると考えられてきた。だが、コレステロールは神経細胞膜の構成成分の一つでもあり、認知機能にとっても重要な働きをする栄養素という視点から、卵や食事からのコレステロールの摂取を見出す必要がありそうだ。
  (白澤卓二・米ミシガン大客員教授)

風邪の民間療法について

風邪やインフルエンザに、民間療法の効果とは

2017年1月12日(木)毎日新聞夕刊記事~Dr.白澤『100歳への道』より


本格的な風邪のシーズンが到来したが、「風邪に効く、予防効果がある」とされる民間療法には、どれほど実際の効果があるのか。
 カナダ・アルバータ大のマイケル・アラン医師は、これまでに報告された「風邪症候群」や「上気道感染症」の民間療法に関する医学論文を包括的に検証、評価した。

 うがいや手洗いといった一般的な予防法から、亜鉛サプリメントやプロバイオテックス(腸内細菌に有益な効果をもたらす微生物)などの食品、ビタミンC大量摂取やビタミンDなどのビタミン療法、さらにはハーブ療法まで11種類を取り上げた。
 
その結果、「おそらく効果あり」とされた民間療法はわずか二つ。
一つは手洗いとマスクや手袋での感染予防だ。
もう一つは亜鉛サプリメントで、学童期の子供が年間に風邪を引く回数、または風邪で学校を休む日数を有意に減らすと報告されている。

 一方、統計学的に健康法を検証するアプリ「マイヘルシー」のデーターでは、ココナツオイルが風邪を予防する民間療法として有効である可能性が示唆される。
また、インフルエンザの民間療法を科学的に評価したインド政府の防衛研究開発局核医学研究所のラジェッシュ・アロラ博士のレビュー論文(先行研究の検討)によれば、最近の研究で、ココナツオイルに含まれる中鎖脂肪酸であるラウリン酸が体内でモノラウリンに分解されると、ウイルスの外被たんぱく質に作用し、抗ウイルス作用を発揮する仕組みが明らかとなった。
 風邪の原因の中でおよそ2割を占めるコロナウイルスは同様に外被を持つウイルスであり、同じ仕組みで予防できると考えられるという。

このように、広く社会に受け入れられておる民間療法に新たな作用メカニズムが見出されることもある。

  (白澤卓二・米ミシガン大客員教授)

古代小麦で作られたパン

2016年10月20日毎日新聞夕刊記事~Dr.白澤『100歳への道』より~

古代小麦で作られたパン

米国で130万部のベストセラーとなった「小麦は食べるな!」の著者、ウイリアム・デイビス博士によると、米国産の現代小麦は繰り返し行われた品種改良でグルテンの含有量が高くなり、パンがふんわり膨らむようになった。一方で、血糖が上昇しやすく、たとえ全粒粉の小麦を使っても肥満、2型糖尿病、心臓病や認知症の発症リスクを上げていると、その著書の中で警鐘を鳴らしている。

血糖値低下のデータも

心臓病のリスクを軽減できるのか。イタリアのフィレンツェ大のアリス・セレニ博士らの研究チームは、現代小麦で作ったパンを古代小麦で作ったパンに置き換えることによりコレステロール値や血糖値を下げ、心臓発作や脳卒中のリスクを下げ荒れる可能性を示唆し、話題を呼んでいる。平均年齢50歳の健康成人45人を対象に、現代小麦によるパンをベルナという古代小麦で作られたパンに8週間置き換えた前後で、血糖、総コレステロール、LDLコレステロール値を検討。その次の8週間は再び現代小麦のパンの置き換え、最後の8週間はジェンティルロッソ、あるいはアウトノミアBという他の古代小麦で作ったパンに置き換えた。その結果、ベルナのパンを8週間摂取すると総コレステロールは前値に比べ3.1%、血糖値は5.6%も低下していることが分かった。ほかの2種の古代小麦のパンについても、同様の傾向が観察された。

ただ、小麦を有機農法で栽培したか、農薬や化学肥料を用いた慣行農法で栽培したかは、数値に影響を与えなかった。これステロ値や血糖値がきになるひとは、現代小麦から古代小麦に置き換えた方がより健康的になるだろう。

(白澤卓二・新宿白澤記念クリニック最高顧問)

ナッツで、認知症予防

2016年10月6日毎日新聞夕刊記事~Dr.白澤『100歳への道』

認知症を招く脳の炎症

認知症の最大の原因疾患であるアルツハイマー病は、認知機能の低下に伴い脳で炎症変化が起きていることが報告されている。
一方、脳血管性認知症では、脳の動脈硬化病変により認知機能が徐々に低下するが、この病気でも動脈硬化病変を炎症性変化が悪化させている。

では、そうした脳の炎症や動脈硬化病変の炎症を食事で抑えることは可能なのか。 
米国ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のイン・パオ博士らの研究チームは、ナッツ類に身体の炎症を抑える効果があることを報告して話題を呼んでいる。博士らはこれまで、ピーナツやアーモンド、クルミなどのナッツ類を多く摂取する人はがんや心臓病などを含む総死亡率が低いことを報告してきた。
 今回の研究では、12万人以上の女性看護師を対象とした健康調査と5万人以上の男性医療専門家を対象とした疫学調査を用い、食事質問で把握したナッツ類の摂取量と血液サンプル中の炎症のバイオマーカーの関連性を調べた。
 その結果、週に5カップ以上のナッツ類を摂取する人は、ナッツ類をほとんど食べない人に比べ、CRPやIL-6と呼ばれる炎症性バイオマーカーの値が有意に低い子ことを見出したのだ。
また、赤身肉、加工肉、卵、精製穀物を週に3カップ分だけナッツ類に置き換えても、炎症性バイオマーカーが有意に低くなることが判明した。

=ナッツ類摂取が有効か=
ナッツ類にはマグネシウム、食物繊維、L-アルギニン、抗酸化物質、αリノレン酸などの不飽和脂肪酸が豊富に含まれていることが知られているが、健康に良いこれらの成分が身体の炎症を抑えたのではないかとパオ博士は考察する。認知機能を保つために脳の炎症を抑えたいなら、ナッツ類を選択するのが良さそうだ。

(白澤卓二・新宿白澤記念クリニック最高顧問)
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