唐辛子とショウガ

2016年9月29日(木)毎日新聞夕刊記事~「Dr.白澤 100歳への道」より

唐辛子とショウガ

唐辛子は中南米を原産とするナス科の果実で、香辛料として世界中に使われている。
食材としてだけでなく、健医薬、しもやけ・凍傷の治療、育毛などの薬として使われた歴史がある。
唐辛子の辛味成分カプサイシンは感覚神経のカプサイシン受容体に結合すると痛み刺激や辛味刺激を起こすことが知られている。
日本でも「激辛ブーム」以来、消費量が増えたが、唐辛子を多く摂取する国では、胃がんや食道がんの発がん率が高いと報告され、唐辛子の過剰摂取との関連性が指摘されている。

食べ合わせで発がん抑制か

一方、ショウガはショウガ科の多年草で根茎が食材や生薬として使われている。ショウガ特有の辛味成分ギンゲロールは血流を促進して冷えを改善する効果や、免疫力を向上させる効能が報告されている。
 唐辛子とショウガはともにアジア料理に幅広く使われているが、一緒に使うと唐辛子による発がん性が相殺されるだけでなく、より健康な食べ合わせになっていることが報告され話題を呼んでいる。

中国の河南大薬学部のシェンナン・ゲン博士らの研究チームは、肺がんを発症しやすいマウスを用いてカプサイシンとギンゲロールが肺がん発症率に与える影響を検討した。その結果、カプサイシン投与群のマウスはすべて肺がんを発症したのに対し、ギンゲロール投与群の肺がん発症率はカプサイシン群の50%に、カプサイシンとギンゲロールの両方を投与した群ではカプサイシン群の25%に、肺がんの発症率が減少していた。研究チームが肺がんの病理組織を解析すると、カプサイシン群ではがん細胞に炎症を伴っていたが、ギンゲロールを併用した群ではその炎症が抑えられていることが分かった。
激辛好みの人は、ショウガをうまく組み合わせることでがんを予防する効果が期待できそうだ。

白澤卓二(新宿白澤記念クリニック最高顧問)



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クラシック音楽に健康効果

毎日新聞2016年7月21日夕刊記事より~Dr.白澤『100歳への道』

芸術作品で脳を刺激

前々回のコラムで、前頭葉への磁気刺激治療で神経幹細胞を再生させ認知症を予防する可能性を紹介した。しかし、磁気刺激により分裂した神経幹細胞が神経細胞に分化し神経回路を形成するには、さらなる脳への刺激が必要なことが最新の研究で分かった。
昔から左脳は論理脳、右脳は芸術脳と言われているが、実際、言語を発するときの中枢(運動性言語中枢)は左前頭葉にあり、音楽を奏でるときの中枢(運動性音楽中枢)は右脳前頭葉にあることが分かっている。したがって左右の前頭葉の萎縮を予防するためには、脳トレのような論理回路の刺激のみならず、カラオケや芸術鑑賞による刺激も必要になるだろう。
 
クラシック音楽に健康効果

そこで新宿白澤記念クリニックでは磁気刺激治療後にオルゴール療法も行えるリラクゼーション室を設計した。オルゴールは3.75ヘルツから10万ヘルツの可聴領域を超える幅広い音の響きが脳を刺激するといわれているが、静かに目を閉じ、白鳥の湖(チャイコフスキー)、愛の夢(リスト)、カノン(ペッヘルベル)、アベ・マリア(バッハ)などのクラシック音楽を聴くと脳の深い部分が刺激されるためか演奏が終わったときに涙ぐむ人が多い。

最近のドイツのルール大の研究でも、モーツアルトやシューベルトやシュトラウスなどのクラシック音楽鑑賞に血中脂質濃度と心拍数を下げる効果を認めるが、ポップバンドBBAの音楽を聴いてもそのような健康効果が認められないことが、参加者120人を対象にした実証試験で明らかとなった。

クリニックには私の父で医師でもあった画家・白澤実の絵画が多数展示され、芸術作品に囲まれた環境で磁気刺激治療を受けられる。デジタル化された現出会い社会の中でバランスよく脳の認知機能を維持していくために、芸術作品と触れ合うなどのアナログ刺激が今後、重要になるだろう。

(白澤卓二・新宿白澤記念クリニック最高顧問)

カルシウムサプリより食品からカルシウムを!

2016年9月15日毎日新聞夕刊記事より~Dr.白澤『100歳へに道』

高齢者とカルシウムサプリ

1日に必要なカルシウムの摂取量は650ミリグラムと言われているが、実際には男性で平均520ミリグラム、女性で489ミリグラムしか取れていないので、一日約130~160ミリグラムのカルシウムが不足している。
カルシウムは牛乳、チーズやヨーグルトなどの乳製品、そしてめざし、イワシなどの小魚、豆類、チンゲンサイや小松菜などの緑黄色野菜、ワカメや寒天などの海藻類に含まれる。
高齢者には食が細くなったり消化管からの吸収が悪くなったりするので、サプリメントで摂取している高齢者も多い。

<脳卒中経験者に認知症リスク>

しかし、サプリメントで摂取すると血中のカルシウム濃度が一時的に上昇するため認知症リスクを高めていることが分かった。
スウェーデンのイエーテポリ大精神神経疫学部門のユルゲン・カーン博士らの研究グループは、認知症のない70~92歳のスウェーデン人女性700人を対象に5年間追跡調査を行い、カルシウムサプリメントの摂取と認知症の発症リスクとの関連性を検討した。
観察期間中に新たに59人が認知症を発症した。その内訳はカルシウムサプリメント非摂取群では602人中45人(7.5%)だったのに対し、摂取群では98人中14人(14.3%)と約2倍の認知症リスクがあることが分かった。
さらに解析を脳卒中に経験している女性108人に限ると、認知症の発症リスクがなんと6.77倍に上昇していることが分かった。脳卒中の経験がない女性はサプリメントを摂取しても認知症リスクは上昇しなかった。
 カーン博士は血中カルシウム濃度が上昇することにより、脳の病変部において、神経細胞が死んだり血液が固まりやすくなったりするなどの変化が起きているのではないかと考察する。高齢期にはカルシウムはサプリメントではなく食品から摂取した方が良さそうだ。

(白澤卓二・新宿白澤記念クリニック最高顧問)

ケトン体について

2016年9月8日(木)毎日新聞夕刊記事・・・Dr.白澤『100歳への道』より

認知力改善するケトン体

アルツハイマー病の認知機能を改善させることが報告されてから、日本でもココナツオイルが人気だ。このオイルに含まれる中鎖脂肪酸は小腸で吸収された後、肝臓に運ばれケトン体に代謝されるが、このケトン体が認知機能を改善させていることが最近の研究で分かった。
厳しい糖質制限食でも肝臓でケトン体が産生されるので、別名ケトジェニックダイエットと呼ばれる。ケトン体は筋肉の代謝を促進させる。プロテニスのノバク・ジョコビッチ選手は食事をグルテンフリーの糖質制限食に変えてから快進撃が始まったと著書「ジョコビッチの生まれ変わる食事」で明かした。
しかし、認知機能や身体機能を保つように血中ケトン体の濃度を維持するには厳しい糖質制限を続ける必要があり、多くの人が続けられずにリバウンドしてしまう(自己流の極端は糖質制限は栄養の偏りなどが起こりやすく、腎臓病の患者や妊婦ら糖質制限にリスクが伴う人もいる)。

動物実験で運動能力も向上

英国ケンブリッジ大のアンドリュー・マレイ博士らの研究チームは、ケトン体そのものを食事で摂取することにより認知機能と持久力を向上させられえる可能性をラットで証明した。
研究チームはケトン体をケトンエステルという形でラットに投与。ケトンエステルは速やかに消化管から吸収されてケトン体に変換され、5日間の摂取でラットのトレッドミル(走行マシン)での運動能力が32%向上、8の字迷路での認知機能が38%向上、心臓の代謝とパフォーマンスがケトンエステル投与群で有意に向上したのだ。
一方で血中のコレステロール、中性脂肪、血糖は有意に低下していることが分かった。
 ケトンエステルはサプリメントに応用可能なので、厳しい糖質制限を続けられなかったひとには朗報になるだろう。

(白澤卓二・新宿白澤記念クリニック最高顧問)
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