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クラシック音楽に健康効果

毎日新聞2016年7月21日夕刊記事より~Dr.白澤『100歳への道』

芸術作品で脳を刺激

前々回のコラムで、前頭葉への磁気刺激治療で神経幹細胞を再生させ認知症を予防する可能性を紹介した。しかし、磁気刺激により分裂した神経幹細胞が神経細胞に分化し神経回路を形成するには、さらなる脳への刺激が必要なことが最新の研究で分かった。
昔から左脳は論理脳、右脳は芸術脳と言われているが、実際、言語を発するときの中枢(運動性言語中枢)は左前頭葉にあり、音楽を奏でるときの中枢(運動性音楽中枢)は右脳前頭葉にあることが分かっている。したがって左右の前頭葉の萎縮を予防するためには、脳トレのような論理回路の刺激のみならず、カラオケや芸術鑑賞による刺激も必要になるだろう。
 
クラシック音楽に健康効果

そこで新宿白澤記念クリニックでは磁気刺激治療後にオルゴール療法も行えるリラクゼーション室を設計した。オルゴールは3.75ヘルツから10万ヘルツの可聴領域を超える幅広い音の響きが脳を刺激するといわれているが、静かに目を閉じ、白鳥の湖(チャイコフスキー)、愛の夢(リスト)、カノン(ペッヘルベル)、アベ・マリア(バッハ)などのクラシック音楽を聴くと脳の深い部分が刺激されるためか演奏が終わったときに涙ぐむ人が多い。

最近のドイツのルール大の研究でも、モーツアルトやシューベルトやシュトラウスなどのクラシック音楽鑑賞に血中脂質濃度と心拍数を下げる効果を認めるが、ポップバンドBBAの音楽を聴いてもそのような健康効果が認められないことが、参加者120人を対象にした実証試験で明らかとなった。

クリニックには私の父で医師でもあった画家・白澤実の絵画が多数展示され、芸術作品に囲まれた環境で磁気刺激治療を受けられる。デジタル化された現出会い社会の中でバランスよく脳の認知機能を維持していくために、芸術作品と触れ合うなどのアナログ刺激が今後、重要になるだろう。

(白澤卓二・新宿白澤記念クリニック最高顧問)

カルシウムサプリより食品からカルシウムを!

2016年9月15日毎日新聞夕刊記事より~Dr.白澤『100歳へに道』

高齢者とカルシウムサプリ

1日に必要なカルシウムの摂取量は650ミリグラムと言われているが、実際には男性で平均520ミリグラム、女性で489ミリグラムしか取れていないので、一日約130~160ミリグラムのカルシウムが不足している。
カルシウムは牛乳、チーズやヨーグルトなどの乳製品、そしてめざし、イワシなどの小魚、豆類、チンゲンサイや小松菜などの緑黄色野菜、ワカメや寒天などの海藻類に含まれる。
高齢者には食が細くなったり消化管からの吸収が悪くなったりするので、サプリメントで摂取している高齢者も多い。

<脳卒中経験者に認知症リスク>

しかし、サプリメントで摂取すると血中のカルシウム濃度が一時的に上昇するため認知症リスクを高めていることが分かった。
スウェーデンのイエーテポリ大精神神経疫学部門のユルゲン・カーン博士らの研究グループは、認知症のない70~92歳のスウェーデン人女性700人を対象に5年間追跡調査を行い、カルシウムサプリメントの摂取と認知症の発症リスクとの関連性を検討した。
観察期間中に新たに59人が認知症を発症した。その内訳はカルシウムサプリメント非摂取群では602人中45人(7.5%)だったのに対し、摂取群では98人中14人(14.3%)と約2倍の認知症リスクがあることが分かった。
さらに解析を脳卒中に経験している女性108人に限ると、認知症の発症リスクがなんと6.77倍に上昇していることが分かった。脳卒中の経験がない女性はサプリメントを摂取しても認知症リスクは上昇しなかった。
 カーン博士は血中カルシウム濃度が上昇することにより、脳の病変部において、神経細胞が死んだり血液が固まりやすくなったりするなどの変化が起きているのではないかと考察する。高齢期にはカルシウムはサプリメントではなく食品から摂取した方が良さそうだ。

(白澤卓二・新宿白澤記念クリニック最高顧問)

ケトン体について

2016年9月8日(木)毎日新聞夕刊記事・・・Dr.白澤『100歳への道』より

認知力改善するケトン体

アルツハイマー病の認知機能を改善させることが報告されてから、日本でもココナツオイルが人気だ。このオイルに含まれる中鎖脂肪酸は小腸で吸収された後、肝臓に運ばれケトン体に代謝されるが、このケトン体が認知機能を改善させていることが最近の研究で分かった。
厳しい糖質制限食でも肝臓でケトン体が産生されるので、別名ケトジェニックダイエットと呼ばれる。ケトン体は筋肉の代謝を促進させる。プロテニスのノバク・ジョコビッチ選手は食事をグルテンフリーの糖質制限食に変えてから快進撃が始まったと著書「ジョコビッチの生まれ変わる食事」で明かした。
しかし、認知機能や身体機能を保つように血中ケトン体の濃度を維持するには厳しい糖質制限を続ける必要があり、多くの人が続けられずにリバウンドしてしまう(自己流の極端は糖質制限は栄養の偏りなどが起こりやすく、腎臓病の患者や妊婦ら糖質制限にリスクが伴う人もいる)。

動物実験で運動能力も向上

英国ケンブリッジ大のアンドリュー・マレイ博士らの研究チームは、ケトン体そのものを食事で摂取することにより認知機能と持久力を向上させられえる可能性をラットで証明した。
研究チームはケトン体をケトンエステルという形でラットに投与。ケトンエステルは速やかに消化管から吸収されてケトン体に変換され、5日間の摂取でラットのトレッドミル(走行マシン)での運動能力が32%向上、8の字迷路での認知機能が38%向上、心臓の代謝とパフォーマンスがケトンエステル投与群で有意に向上したのだ。
一方で血中のコレステロール、中性脂肪、血糖は有意に低下していることが分かった。
 ケトンエステルはサプリメントに応用可能なので、厳しい糖質制限を続けられなかったひとには朗報になるだろう。

(白澤卓二・新宿白澤記念クリニック最高顧問)

ブロッコリーが がん予防

2014年1月16日 毎日新聞夕刊記事より~「Dr.白澤 100歳への道」

びっくりブロッコリー

アブラナ科の野菜はがんの予防効果が最も高い野菜として栄養学的に評価されている。中でもブロッコリーは免疫系を活性化する作用がある。
ブロッコリーにはフィトケミカル(植物由来の化学物質)が200種類以上も含まれ、その一つのグルコラファニンはヒトの腸管で、植物に存在する酵素ミロシナーゼの働きでスルフォラファンという活性型フィトケミカルに変換されることが知られている。

イギリスのブロッコリー栽培会社であるベネフォート社が2011年から販売している新種のブロッコリーは、グルコラファニンを通常の数倍以上含有する品種改良型として注目されている。最近の研究で、この品種はグルコラファンをたくさん生産できる遺伝子により栄養価が高くなっていることが明らかになった。このような遺伝子組み換え作物は、今後、有効性と安全性に関する検証が必要になってくるだろう。

低音加熱調理で栄養価保って

一方、栄養価に高いブロッコリーも冷凍処理されると栄養価が下がってしまうとの報告がある。冷凍処理前の高温加熱処理で酵素のミロシナーゼの活性が失われてしまうためだ。しかし、最近のイリノイ大の研究によると、通常より低い76度で加熱処理すればミロシナーゼの活性が温存されることが分かった。

他の方法としてはブロッコリーにミロシナーゼを含むラディッシュを少量混ぜて冷凍することも効果的だ。ラディッシュの酵素は熱に強いため、冷凍ブロッコリーと一緒に解凍してもがん予防効果が残るのだ。

ちなみに、私はブロッコリーを生のままミキサーに入れてフレッシュなミックス野菜ジュースにして楽しんでいる。栄養価の高い野菜を選び、かつ栄養価を保つ調理法で摂取したい。

白澤卓二・順天堂大大学院教授

ダイエットには、タンパク質

2013年10月3日毎日新聞夕刊記事より~「Dr.白澤 100歳への道」

ダイエットの新知見

ちまたにはさまざまなダイエット法が氾濫し、本屋の店頭にはたくさんのダイエット本が積まれ、どれが自分に適しているのか迷うほどだ。

しかし、極端はダイエットをすると一時的に減量できても結局はリバウンドして努力が無駄になることが多い。
脂肪燃焼を目指しても、筋肉量が減り体力や免疫力を失ってしまうこともある。
健康的なダイエットのためには厳格な栄養管理が求められるのだ。

そんな中、ダイエット時に避けられないと考えられていた筋肉量の低下を防ぐ有効な方法が報告され話題を呼んでいる。

たんぱく質の摂取量を調節

米陸軍省環境医学研究所のスティーブン・パシアコス博士らの研究グループは、39人のボランティアを3群に分け、カロリー制限と運動による21日間のダイエットを指導した。

第1群には推奨量のたんぱく質(体重1キロ当たり0.8グラム)、
第2群には推奨量の2倍、
第3群には3倍のたんぱく質を摂取するように栄養指導をした。

その結果、第1群は最も減量効果が大きかったものの減量分の58%は筋肉の減少だったのに対し、第2群は減量効果が若干少なかったが、筋肉減少は30%にとどまり70%は脂肪分の減少だった。
一方、第3群はたんぱく質を一番多く摂取したのにもかかわらず、減量分の36%は筋肉の減少だった。

パシアコス博士はダイエット中の筋肉減少を抑えるためには、推奨量の2倍量のたんぱく質を摂取することが必要だと結論付けた。
今回の研究で分かったのは、健康的に減少するためにはたんぱく質の摂取量を適切に増やすことが脂肪を効率よく燃焼させるということだ。摂取カロリーさえ減らせばいいわけではないのだ。

(白澤卓二・順天堂大大学院教授)
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